新宿梁山泊の舞台が"
闇鍋のようなもの”だとするならば、ジャン・裕一は"
豆腐”のような存在なのかもしれない
、、、そんな事をふと帰りのバスの中で思った
喩えが乱暴すぎて何の事やら、そうお思いの方に説明するとここで言う舞台とはつまり先日観た
新宿梁山泊『唐版・犬狼都市』についての事
コロナ禍真っただ中、というよりも増加傾向にある東京へあえて行ったのはあくまでも
仕事の用事があったから(←ここ重要)
とはいえ、せっかく行くのならば少し足を延ばして同胞、ジャン・裕一が出ている芝居を観るべきではないか
しかも今回は下北沢線路外空地に建てられた紫テント、そして何よりも新宿梁山泊の舞台
新宿梁山泊(以下、梁山泊と略す)、、、今から二十数年前、演劇に関わり始めた頃に出会い衝撃を受けた自分にとってルーツのような劇団
地元(といっても隣町・国府)の方と縁があった関係でほぼ毎年といっていい程に近い場所で公演を打ってくれたおかげで幾度となく観劇する機会があり、ある時などは地元有志のツアーに便乗して富山まで行くほどの熱狂的梁山泊ファンであった
ちなみに当時、劇団の若きヒロインであった近藤結宥花 (当時は近藤優花)さんのファンで貰ったサイン色紙は今もラップで包んで、、、
、、、という話は長くなるのでさておき、と
何はともあれ
紫テントである
(↑写真は裏口から写したもの)
紫、といえば殿下(プリンス)のシンボルカラー、そこに心ときめかずにいられないプリンスファンは居ないだろう
ってプリンスファンの話じゃねぇし!
、、、脱線が続くので時を戻そう m(__)m
という事で
新宿梁山泊だ
梁山泊といえば唐十郎作品(勿論、座付き作家による作品も多いが)、唐十郎といえばアングラの代名詞のような人
独特の語り口の台詞は時に激しく、時に重々しく
その混沌とした世界は理解するには容易くない、、、
(唐さんの作品について語れるほど観ていないのであくまでも今まで観た作品から受けた印象)
そして今回の作品も、、、
かくいう私も実は今までになくチンプンカンプン、今、舞台の上でどんな展開になっているのかわからなくなったくらいで
随分と永い事こういう芝居に触れていなかったけど、ああ、こういう感じだった、こういうのが観たかったんだ
という感覚を取り戻すまで少し時間が掛った程
最近は理解出来ない事がストレスに感じる人も少なくないのでそういう意味ではやっぱりアングラって万人受けするものじゃないって事なんだろうけれど(それでこそアングラたる由縁ではあるが)
ただ、その難しさはつまり理解しようとするからそうなるわけで、そもそも思うに、アングラ芝居とは理解するものではない
いや、アングラだけではなく舞台演劇とは理解するものではないのだ
舞台演劇とはライブであり体感すること
何よりも目の前で起こっているコト、目にし耳に入りし動いているモノに対して受け止め感じること
それが大事なのではないかと
それに加えて
テント芝居である
そう
テント芝居に理屈や筋道など要らない
テントをくぐればそこは現実と切り離された空間
舞台の上で繰り広げられる異世界に誘われるまま身を委ねたもの勝ち
ハチャメチャで何でもアリ、次から次へと登場する奇妙奇天烈な味
味に整合性もあったものじゃない、なのにとてつもなくハマってしまう魔法の闇鍋
それがアングラという闇鍋なのではないかと
見るからに濃厚なスープの中にあるのは煮込まれた色とりどりの沢山の具(役者)たち
異形やゲテモノ(食えないモノではない)に混じって美しく色鮮やかな彩りを放つモノ(ヒロイン、または主人公)が見え隠れ
ごった煮の具の中でもがくように浮いては沈み、また浮いてくる
その中のひとつ(一人)が
ジャン・裕一(旧名:中田裕一)である
(写真はトイレの前に立つジャン↓ちなみにトイレが舞台ではないのであしからず)
とはいえ彼の舞台経歴にアングラという文字は無い(少なくとも最近までは)
梁山泊の舞台に出てからジャン・裕一と名を変え、二度目の舞台
そんな彼にとってどこまでアングラ演劇の水は合うんだろうか、と
そんな不安(、、、ではないか)などどこ吹く風
目の前の舞台に居たのは今までと変わりない中田裕一(=ジャン・裕一)
そう、、、そこに居たジャンはまさにアングラという闇鍋に浮かぶ豆腐だったのである
豆腐、すなわち万能の具材
どんな鍋に入れても邪魔にならないしスープを染みこみすぎて素材感を失う訳でもなく、余計な事をしなければ煮崩れることも少ないし他の具との共存も可能
それでいて豆腐としてのアイデンティティを保ち続けるという文字通り白くて憎めない輩
それが今回の芝居における豆腐としてのジャン・裕一だったのではないかと
近年は映像での活躍が目立つがあくまでも出自は舞台
舞台に立ってこそ魅力を放つ男、それがジャン・裕一
独特のオーラを放ち、舞台でも映像でも見劣りすることなく、出しゃばりすぎず、それでいてしっかり存在感を刻む
主役もこなすが今回はあくまでもアンサンブルであり、それでいて重要な役割
道化のように場を和ませるかと思えば、ある場面ではかき回し混乱へと導く
なのに最後は狂言回しのようにしっかりと〆たりもする
そういった多彩な表現を必要とされる役に対して、今までと何らスタンスを変えることなくそれでいてアングラの鍋の中でもちゃんと存在感を放っていたのである
、、、と、あまりに褒めすぎるとある種の身内びいきというか
提灯記事にも思われそうなのでほどほどにしとかないと
あえて欲を申せば、アンサンブルとしてのジャンも捨てがたいがやはり主役を張ってこそ輝きを放つ男
次作『YEBI大王』ではタイトルロール(つまり主役)を演じると聞くがスタンスを変える必要が無いとはいえそこはやはり新宿梁山泊
郷に入れば郷に従えではないがクセモノ揃いの面々の中で他者を凌駕するほどの存在感が必要となる気がするわけでつまり
今ある豆腐のしっかりとした強さと柔軟さを保ちつつも湧き出るような強烈なエグ味があってもいいのではないかと
それこそ食べると中からジュワッと染み出る黄色いやつにヒリヒリとさせられるようなあのカラシ豆腐のように
いや、おそらく主役になったらなったで噛めば噛むほど染み出でるような味わい溢れる堂々たる姿を見せてくれるのではないかと密かに期待しているが
そんな『唐版・犬狼都市』
勿論、ジャンだけではなく舞台を彩る役者たちの中には魅力あふれる面々が揃っているので、その中から貴方好みの具材を見つけるのもオツではないだろうか
、、、ってだから鍋の具材に喩えなくてもいいですよね、はい
m(__)m
蛇足だが下の写真はテントの片隅で見つけた劇団の洗濯スペース、、、ってやってる事は覗き行為のようだが決して覗いたわけじゃなく見つけただけ
こういう雰囲気が感じられるからテント芝居は面白いのである
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